平和を願う心は恐怖からくるもので、望む方向ではない。いや、あながち間違っていないけど、最初からその願いだったわけじゃない。
世界中の苦しむ人の声を聞いてしまった、経済状況が芳しくない家庭を知ってしまった、過酷な労働条件で働かされている人を見聞きしてしまった、、、
これらの殺伐とした情報は頭の中を何度も駆け巡って、自分は「とりあえず平穏な世界」を望むことになった。それ以前の、エンターテイナーとかアーティストとかの夢は抑圧された。
「今はそのときじゃない」
自分の楽しさなんて、世界の平和という大きすぎる名分の前に霞むもの。いや、見ないように。世界を放って自分だけ楽しくあろうなんて赦されるはずがない、そう思って、しまいこんだ。
でも――世界中を穏やかにするのなら、自分も穏やかにするってこと。利他主義を隠れ蓑として承認欲求が存在していて、本当の利他を追求していた自分は、この考えにシフトすることにした。